アルプス山脈で発見されたミイラ(アイスマン)にはツボの刺青があった!

アルプス山脈

1991年9月。オーストリアとイタリアの国境の山岳地帯で、5200年前のミイラが発見されました。標高3200メートルの氷の大地で見つかったそのミイラは、驚くほど良好な状態でした。
冷凍ミイラ「アイスマン」です。
古代エジプトの最初のピラミッド建造よりも遥か昔、新石器時代に生きていた男で、身長は約160cm、死亡した年齢は40代半ばでした。左利きで靴のサイズは26cm、羊や山羊の皮を縫い合わせて作ったコートを着ていたようです。
左肩に弓矢による傷があったことと、頭部に鈍器で殴られた跡があることから、同じ人類によって殺害されたことがわかりました。

アイスマン ミイラ

発見から約30年、当時の様子を解明しようと多くの研究者たちが彼の身体を研究してきました。
遺伝性異常によって第12肋骨が形成不全になっていること。虫歯、腸内寄生虫、ライム病(ダニが媒体の感染症で発熱、筋肉痛、関節痛などの症状が出ます)に悩まされていたこと。CTスキャンによって動脈硬化になりやすい遺伝的体質であることが判明しました。

さらに、骨や関節を研究した結果、面白いことがわかりました。
アイスマンは慢性的に膝痛、腰痛、背中や肩の痛みを抱えていたようなのです。
彼の体には61箇所に刺青が施されていました。
当時は体に刺青を入れることが当たり前の文化としてあったようです。動物などを象った装飾の意味合いを持つ刺青もありましたが、アイスマンには非装飾的な、直線や十字の刺青が体のあちこちに印のように彫られていました。
その刺青の位置が、痛みの原因となる関節や損傷がある骨の位置を示しているものでした。
そして、刺青の内15箇所は現代の鍼灸治療で使うツボの位置とも一致しているのです。

このことから、中国で医学として体系化されるさらに2000年も前から、人類は痛みや炎症に効果のあるポイントを探し、そこを刺激することで治療を行っていた、という仮説がオーストリアのレオポルト・ドルファー医師により立てられました。
痛みを緩和するために体表刺激を行うことが、5000年以上も前から人間の本能的な医療行為として存在していた可能性があるのです。そこから現代に至るまで、多くの人々が人体を観察し、実験し、失敗と成功を重ねながら治療点としての「ツボ」を確立させてきたのです。
ツボは新石器時代から(もしかするともっと昔から)の、人類の探究心と知恵が生んだ、健康の秘訣なのかもしれません。

アイスマン復元予想

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